ぶたびより

苦しみは罰でも贖罪でもないんですよ

女医コンとFCCS

 冷夏のようで、日照時間の不足からきゅうり農家が厳しい状況に置かれている。そんなニュースを見ながら新幹線に乗った。水族館のダイオウグソクムシが久しぶりにエサを食べたとかと同列のほのぼのしたニュースだ。確かに最近やけに涼しい。歯にくっつきやすいスナック菓子のカールのおじさんがキュウリ畑の前で困惑している様をなんとなく想像する。田舎くらしなのに農家のイメージに乏しい。カールのおじさんが農家なのかどうかもよく分からない。

 

 「まだ婚活って年でもないでしょ、というかあまり長く独り身が続くとドンドン交際相手のハードルが上がっていくよ。まずは手近な人と交際してみなよ、敢えて東京で婚活パーティー、しかも女医コンに参加する必要があるのかね……。」と他科の指導医が先日学生の1ヶ月お疲れ様でしたの飲み会で言っていた。

「先生もそういうの感じますか、僕はその手の長く交際相手がいないせいで起こる精神の変化を童貞膜によるものと考えています。いい響きでしょ、膜が張る、相手の接触が困難になる、間があくと膜がまた少し厚くなる。今、先生の心に童貞膜を導入しました」

「童貞膜ねえ……。」

「あと僕えむなので、断然女医コンです」

「えむ」

「はい」

 

 新幹線に乗り、在来線に乗り換えて池袋についた。池袋はラーメンのイメージがあるのだが別に池袋でラーメンを食べたことはない。なんとなく体調が悪くてホテルで嘔吐した。珍しく東京に来たのに酒を一滴もいれなかった。多分本当に体調が悪かったのだと思う。ある程度までは日々の飲酒量が全身状態を反映する印象があり、なんだかフランクスターリンの法則みたいだ。ホテルメトロポリタンの裏の方にあるちょっと小汚い感じの古いアパートじみたビルがビジネスホテルになっていたのでそこに泊まることにした。ADHDなので当日予約だ。3連休なのに空いていてよかった。

 なんだか最近何をするにもやる気がでない。古ぼけたホテルの壁紙がなんだか今の自分のメンタルにマッチする感じがして、なでたりしてみた。何がダメとかいうわけではないけれど、ただ何をするにも何かがダメで、わけもなく悲しい気持ちになってベッドで丸まって寝た。

 FCCSは朝8時からだ。異様に早い。初めての西武池袋線に乗って順天練馬を目指す。なんだか字面が天馬博士みたいだ。FCCSは集中治療の基礎コースらしい。重傷者管理に全く自信がないのにたまにホンモノの重症患者が来るので受けておこうと思った。これは理由みたいで実は理由じゃない。どうせ医師のスキルは患者には分からない。訴えられて初めてスキルが問題にされるし、訴えられるかどうかは純粋な医療スキルとは無関係だ。そして訴訟に合うリスクはもともと極めて低いし、あったとしても保険に入っているから何の問題もない。それでも勉強するのは何故、と言われるとちょっと言葉に詰まってしまう。結局のところ勉強は自己肯定感のための複雑に発達した一種の自慰行為だ。なんだか悲しいけれど、しばらくこの答えから動くことができないでいる。この答えが悲しいのは内的でなく外的な点だ。というのも、僕自身が勉強の空虚性について日々考えてこれはよく発達したオナニーなんですと言いながらうじうじ勉強している横でイキりながらイケイケの医療をやっている人をみると、君はどうしてそんなに幸せそうなんだ、何が違うんだと感じてしまうからだ。僕はやっぱり単純にあんまり医学が好きじゃないのかもしれない。今まで医学に興味をもてたことがあまりない。僕はこの先も永遠に自分の大して興味の持てない領域について、勉強しながらその行為の自慰性について一々メタ的に考察しなければならないのだろうか。何の職業についても良いのなら医者になんかならなかった。日本で頭がそれなりに良いだけでホワイトカラーでそれなりの給料がもらえることが保証されている仕事を医者以外に知らないから医学部に来て医者になっただけなのに。そりゃ僕だってやなせたかしが言ったように真っ赤な血潮が流れているから(オケラも登場するけれど、昆虫はヘモグロビンではなくて鉄のかわりに真ん中の元素が銅だったから色が青なんでしたっけ? あれでも、そもそも昆虫って血液流れているんですかね。前に何かで肺がない代わりに体中に気管支が巡っていてそれで直接ガス交換をするという話を読んだ気がするんですよね→探してみたら虫のガス交換の総論をみつけました。ヘモグロビンを持っている虫もいるようですね、一部はヘモシアニンで青くて、いずれにせよヒトのガス交換における意義とは少し違うようだ。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe1987/10/11/10_11_19/_pdf )だれかが死にそうならば助けなくてはいけないなと思うことはあるんですが学問的な興味があるかというと違うんですよね。

 FCCSが良かったのは主に人工呼吸器のハンズオンセミナーだった。(以下この段落は人工呼吸器の話です)人工肺を用いてコンプライアンスや気道抵抗を変えて、その度に現在の血液ガス所見が提示されて、そして呼吸器の設定をいじる、というようなものだった。知らなかったこととしては、酸素化に寄与するのは僕はFiO2とPEEPだと記憶していたんだけれど、これ実は正確ではなくて、結局酸素のガス交換って二酸化炭素より拡散が悪くて時間がかかるので、肺の広がってる時間が長いほど良い、もいうのがより正確のようだった。肺の広がる時間が長い、というと分かりにくいけれど、これはある程度の長い時間の平均の気道内圧を意味している。たとえばPEEPはベースの圧だからPEEPが高ければ当然平均の圧は高くなる。でも呼吸数をあげても平均の圧は高くなるよね、とかそういう話。あと知らなかったのは、圧規定で換気している時にIE比を変えることで、より長い時間吸気させれば一回換気量が増えるのでは、というのが必ずしも正しくないよね、という話。というのも、ある圧力でどこまで肺が膨らむのかは決まっているので、その圧力で肺が広がりきってない時に限って吸気時間を長くすることで一回換気量が増える。あとは圧規定で換気している時の圧とプラトー圧は別物ですよねという話、吐ききれなくてauto PEEPになっている時は吐いたところで止めて圧をみようね、呼吸数さげようねとか、プラトー圧は30超えないようにねとか、しかしそれだと呼吸数も増やせないし、プラトー圧を下げて一回換気量も保てないとなると分時換気量(MV)がどんどん減るから二酸化炭素貯まるけどいいのか、いいんです、pH7.2まで許しましょう。それで本当に無理ならもう人工呼吸器では多分無理です、とか。あとP/Fを計算してP/Fはその人のその状態であれば一定なのでそれを参考に一気にfio2を下げて良いという話は知ってたんだけど、これの二酸化炭素版があるのは知らなかった。MVと二酸化炭素分圧の積も一定になるらしい。ただし、ここでいうMVは当然ガス交換に実際に関与したMVだ。つまり、一回換気量が極めてすくなくてほとんど死腔だったり、換気回数が多かったりすると死腔のしめる割合が多くなるので呼吸器で見ているMVだとズレてしまう。などなど細かいところはたくさんあるけれど、へえと思った大きなところはそのくらいでしょうか。

 FCCSが終わる時間が18:45だった。女医コンは19:00に六本木でスタートである。どう考えても間に合わない。ADHD氏、婚活すらまともにできないのか。助けてくれ。泣きながら主催者に電話したが繋がらなかった。嫌な汗がダラダラと頬を伝う。

 六本木に着くとキラキラした街で怖かった。ケバブ売りすらがなんだかハイソに見えてしまう。ホテルの一階のお店で女医コンは既に始まっていた。

 ところで女医コンのお知らせメールではドレスコードはおしゃれして来てくださいとだけ書かれていた。おそらくこれはオシャレを求めていないということを僕は知っている。これは面接における自己PRと同じだ。つまりこれの意図は婚活に相応しい格好を調べてその通りの格好でくることができるかどうかという社会的スキルが試されているのである。勉強が得意なのですぐにこの意図を読み取った僕は先週の休日にユニクロで服を飼っていた。婚活、服装、ユニクロ、で検索したところ東洋経済オンラインか何かの10年前の高級服よりユニクロで新品を揃えろという記事を発見した。グレーのスラックス、少し色か模様のついたシャツ、ネイビーのジャケットを着ていけばはずれないらしい。この通りの服を買った。えらい。

 今回の女医コンは参加費女性20000円、男性15000円である。通常の街コンでは男性8000円、女性1000円くらいが相場である。一方で男性医師の婚活だと男性3000円、女性20000円などとなる。今回はその中間くらいだろうか。ちなみに、今回の女医コンではお互いに医師限定となっていた。通常の女医コンで相手が医師でなかったりもする。それだとどちらも10000円くらいが相場のようだ。金の前に女医コンの紹介をするべきだった。女医コンとはその名の通り女医との婚活?パーティーである。婚活なのかどうかはよく分からないが恋活より婚活に近い印象を受けた。

 今回の参加者は女性35歳以下ということだった。分布としては中央値が30を少しこえるレンジが24-35くらいだったと思う。東京の会だったが東京、神奈川あたりの女性が多かった印象、男性は色々なところからきていた。3人対3人や2人対2人での会話なので一人一人と話す時間が短かった。特にだれかが同じテーブルで話し始めると嫌でもその人の会話に耳を傾けなければならない。僕は目の前のきれいなおねえさんとお話したいのに! とか。男性が40以下だったのだったかやや年齢層が高かった。僕が一番若かったと思う。僕は専攻医一年目26ちゃい。ままはどこ?

 さて、とにかくそれぞれの女性と話す時間が少なかった。「どうしてあなたは女医コンに? まだ結婚するような年齢でも? 女医さんってほら、圧が強いというか、そういうとこあるけどいいんですか?」「いや、わたし、おねえさんに命令されたりするのが好きで、いやそういうんじゃないんですよ、そういうのじゃないわけでもないんですが、えっ、あれ、おねえさんキックボクシングやってるんですか。うふふふふ」「そうなんだ、先生はそう思うのね(精神科医による傾聴)」「脂肪肝はエコーできないな、わたし循環器だから」「マーゲンのオペ好きなんですよリンパ節郭清の細かい感じが好きで」「外科は大変っていうけど内科レジデントの頃にちいさな検査値の異常の原因を考えさせられたりした方がゲンナリしちゃったな」「好きな抗精神病薬ありますか?」などなど。女医さんだと会話の内容には困らないので楽。でも自己紹介に行動範囲、銀座、などとあるとひいてしまう。「先生は最寄りどこ?」と言われたので「最寄りの国立公園まで車で1時間くらいですかね? 駅は使いません。田舎なので」僕と年齢の近い女の子は3人しかいなかった。後期研修一年目2人と初期研修一年目1人。会の最後で女医コンのウェブページから好きな女の子にハートを送る。僕はドチャクソ美人のおねえさんと傾聴してくれた精神科の先生と同い年の後期研修医の1人にハートを送った。僕には2人からハートが来ていた。ドチャクソ美人なおねえさんとマッチしたようだった。唯一のマッチ。しかし彼女にとってみたらそもそも年齢の近い男性が僕しかいないし、20000円も払って収穫なしもしんどいから消去法で選んだのかもしれない。それでもいいや。ドチャクソ美人だったから多分みんなからハートをもらって自己肯定感も爆上がりできそう。きっとこの会にこの若さでくる女の子はチヤホヤされたいのだと思うので、ニーズを把握してもっとチヤホヤしたかったのに時間がなくてできなかった。ちなみに二次会は近くの超高層ビルの50数階だった。東京タワーが見えてておされで怖くて泣きそうになった。ずっとフンフン耳抜きなどしていた。主催者の循環器の先生に流石にまだ若いんじゃないの? と言われた。そんな気が僕もします。

 この会やけに高いので、これはサクラがいるんじゃないかな、サクラの募集がm3の医師転職サイトにのってたりするんじゃないとか話していた、結局美人なおねえさんから

 

 

あっ

 

あっあっあっ!!!!

いま、たった

おねえさんからラインきた!!!

きた!!!!!!!

あーーーー!!!

サクラじゃないの?!?!?!!

嘘?!?

ほんと?!?!