ぶたびより

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新規購入株の話:安田倉庫

この文章を読んで損失を被っても筆者は一切の責任を負いません。

 

 ずっと前から倉庫株を購入しようと思っていた。僕の好きな銘柄は結構偏っていて、バリュー株がメインなんだけれど、そのうち赤字に滅多にならないこと(コロナショックでもチャイナショックでもリーマンショックでも黒字など)、財務的にリスクの低いこと、換金性の高い資産(含み益を考慮)から負債を引いた値と株式時価総額を比較した時に割安と思えること(ネットネット株でなくても良いけれど)あたりだ。そこに景気に関係なく利益を上げられるモデルがあるとなお良い(携帯電話のキャリアとかメンテナンスとか官需がメインで景気の影響を受けにくいとか)。

 実は最近インフレ対策に現物資産があった方が良いのではないかと感じていた。これだけ金融緩和を行って貨幣価値が同じままだとはちょっと考えにくい。しかし金利は安いままだろうから、医師免許を利用して社会的信用から負債を得てレバレッジをかけて不動産を取得する、など。楽待に登録して物件を探してみたが、フルローン金利1-2%として管理費・修繕積立金を引いた額が手元に残るとすると、ほとんど手残りがなくて融資期間内(残りの減価償却期間)までに返済ができる物件がなかなか見つからない。さらに空室リスクを考慮すると話はもっと厳しくなる。不動産投資の物件探しはかなり難しい。というか、そもそも株もそうだけれども売りたい人がいるから売買が成立しているのだ。何かしら瑕疵があるかより良い運用方法を見つけたからその不動産を売却したいのである。

 インフレ対策に現物資産の組み入れでリスクヘッジというのは誤っていないはずだ。ところで、企業の資産評価をするときに今まで換金性が高い資産を重視することが多かったから、不動産の価値をあまり考慮していなかった。しかし、現金リッチな企業は単純にため込むだけため込んで経営上有効利用できていないだけだし(不況には強いし、もともと誰も見向きもしない銘柄ばかりで下値が限定的だから僕みたいに本業で安定的に稼げるから大きくもうからなくてもいいしリスクも別にそれほど取りたくない、みたいな人にはきっと良い)、インフレ時には微妙なのではないか。不動産が購入できなくても、良い不動産を持っている企業に投資すればよいのではないか、と考えた。それも不動産業をメインとうたっていなくても営業利益のうち不動産収入が占める割合が高い企業はちらほらある。高島屋とか。

 実質PBRのランキングというのを以前に見た際に倉庫株が上位に多かったことから、何かしら倉庫株を購入しようと決めた。実質PBRは取得時ではなくて現在の土地の価格で補正したPBRになるのだが(必ずしも土地含み益でなくて、有価証券含み益だったりするのだったと思う、たしか。岩塚製菓が自分の時価総額をはるかに超える有価証券を持っているとか。)もともと不人気な倉庫株は実質PBRでさらにバリュー感が増す。倉庫株以外にニッピも候補に挙がったのだが、配当利回りが許容できないレベルに低いことと、飲むコラーゲンというものにそれってエビデンスあるんですかという気分になってしまって気が進まなくてやめた。また、最近ニッピは大阪の難波地区の土地を賃貸することが決まっているが、IRを見た限りではそれほど業績に大きな影響はないとのことでなんだせっかく良い土地もってても大して金にならんのか、みたいな気持ちもあって断念した。次に三菱地所は大型株だから損切はしやすいけれど機関投資家の目が入っているのである程度効率的なマーケットで正確な企業評価に基づいた株価になっていると判断して購入しないこととした。JR東日本でも良いのだが、コロナで業績低迷の真っただ中にあり、今まさに落ちるナイフ状態なので少し手を出しにくい。また金額が比較的大きいので100株購入しただけでポートフォリオの中で結構な比重を占めてしまうことも問題点だった。消去法的に倉庫株が残った。複数の倉庫株を比較して、自己資本の上昇がもっともきれいで、赤字がなく、不動産含み益もあり、横浜のカジノ案件などのカタリストがあって優待(お米2kg分のお米券)+配当の利回りで考えるとそれなりだなと思えたのが安田倉庫だった。また、倉庫株は流通事業をやっているのでコロナ禍下で進行したEコマースの恩恵を受けられるのではないかな、などと思った。安い理由はやはり地味だからなんだろうな。倉庫ですよだって。アマゾンのデリバリープロバイダとして有名になって株価が上がった遠州トラックは住友倉庫の子会社ですものね。しかし住友倉庫もニッピ(大倉財閥系)も安田倉庫も旧財閥系のはずで、ここら辺の企業は永遠にお金持ちなんですね。

 

おまけ:

理論株価推定とか

→IR BANKを確認すると、2008年から2020年までの平均ではフリーキャッシュフロー(FCF)がほぼゼロ、若干マイナスになっている。(営業キャッシュフロー 46億円/年、投資キャッシュフロー 47億円/年のため 46-47で若干マイナスになる)DCF法で考えて過去13年分の業績が今後も持続すると考えると得られるFCFがマイナスなので、理論株価がゼロというかむしろマイナスになってしまう。事業が拡大しているところなら良いのかもしれない。2018年頃までは営業利益が20億円強だったのが、2019と2020年は30億円前後に上昇している。事業への投資がまさに増えんとしている時にDCFで計算してもマイナスなのは仕方ないのではないか。(リース業なんかもCFで評価できないですよね。だからオリックスよくわからなくて難しいんだ。)

 安田倉庫は土地の評価額が470億円、換金しやすい資産として預金60億円+受取手形・営業未収金の合計130億円+投資その他資産420億円になる。土地はよく銀行から不動産投資の時に融資を受ける場合に80%減らして積算価格を出すので、420×0.8倍として保守的に評価する。貸借対照表を見ると、負債の合計は630億円。土地を保守的に換金した状態で資産価値を評価して、負債合計を除くと、470×0.8+130+60+420-630=316億円となる。現在この会社の株式時価総額は951円/株×3036万株=290億円で316億円より安いので事業価値がゼロであっても割安である。

 企業の価値は事業価値と資産価値の和である。事業価値がマイナスだと資産が目減りするのでいけない。FCFの10年程度の平均がマイナスだけれども営業利益はずっとプラスで、2018・2020あたりの投資CFがでかいことから平均FCFがマイナスになっている。社債発行してみたり、メディカル物流倉庫を新規に作ったりしていて、ちょうど今まさに事業拡大の途中だからこれは仕方ないのではなかろうか。

 事業価値=営業利益×(1-法人税率)×期待利回り(=割引率)^(-1)という式があったはずだが、これで計算しても営業利益がマイナスではないのでどうしたって割安になってしまう。FCFの平均がマイナスなのに営業利益がプラスであることだけがひかっかることになるわけだが上述した理由によりあまり心配していない。今後物流業界に期待できると考えて、投資された資金の回収見込みがあり、不動産含み益が莫大で安定した不動産収益がある資産バリュー感+物流のグロース感が強く感じられるならばここは購入に値するのだと思う。

 

そういえば楽天の記事で安田倉庫が紹介されているのを見ました!! いいですよね倉庫株 しかし優待利回りで考えると家族みんなの名義で所有したいところ。優待銘柄は多く持つと利回りが低下してしまうのが残念なところですよね、いや嬉しいんですよ、優待。

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