ぶたびより

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資産運用の話② 非効率的市場

■前回のまとめ

□資産運用についての一つの正解:日経平均NASDAQといった指数と同じように値動きをするインデックスファンドを定期的に定額積み立てていく。株だけで不安な場合は不動産投資を間接的に行っているREITを組み合わせる。場合によっては国債や金価格に連動するインデックスファンドを購入する。株やREITはそれなりのリスクがある。自分のリスク許容度に合わせてそれぞれの資産の比率を設定する。例えば→日経平均連動投資信託20%、日本以外の先進国株式指数連動投資信託20%、国内REIT10%、海外REIT 10%、金10%、現金30%と最初に設定する。生活費を除いた手残りが毎月50万円あれば、それぞれ10、10、5、5、5万円を決まった日に投資していくイメージ。15万円は現金で貯金。年に一回リバランスする=最初に設定した割合になるように一部利確したり、その利確したお金で他の下がってしまったものを購入したりする。

□上記の方法が正解であるとする時に置いた仮定:効率的市場仮説が正しい。効率的市場ではみんなが適切な株価を知っている。株価は常に現状わかるすべての情報を織り込んだ上で正しい値段なので、新しくその会社に関するニュースが出るまで値段は動かない(ニュースというより輸出関連なら円高で動いたりするとかね。あるいは創業社長が急逝するとか。こういう何かが起こると株価が下がる。でもこんなものは予測できないから、ここでは株式投資はギャンブルになる。しかし、株式投資にはリスクプレミアムがあるので、平均的には儲けることができるはず。平均的には儲けることができるなら、多くの会社に分散投資するべきだ。だから投資信託が良い。そして上がるか下がるかは分からないであれば、人件費がかかっている分だけ、アクティブファンドは損だ。だからインデックスファンドを購入する。

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■市場は効率的か

□市場が効率的であれば、株式市場で勝ち続けている人はコイン投げのチャンピオン(コインを何回も投げて最も多く表を連続で出した人がチャンピオン、という競技があるとしたら株式投資のすごい人はこの大会の優勝者)と同じような存在だろうか? どうにも安定したパフォーマンスを出しているとしか思えない人がいる。きっと、株式市場で投げるコインをうまく選ぶことで、表が出やすいものを購入できるのに違いないのだ。そうとしか思えない。上記のインデックスファンドが最高という理論は軟弱な地盤の上に立っている。その地盤の軟弱さを解析することで、インデックスファンドの成績を上回るリターンを得られるはずだ。とすれば、我々の行うべきは非効率的な市場で正当ではない価格で売買されている企業の株を見つけることである。

■価値と価格

□結局のところ、みんなが安く買って高く売ろうとしている。しかし、株価が高いとか安いというのは一体何と比較しているのだろうか。おそらく、何か本質的なその企業の株の価値というものが存在していて、それより高い安いを言っているのだろうと思われる。考えてみると、株式投資は会社の一部を所有していることだ。つまり、会社の価値を計算できれば良い。存在する株数はインターネットですぐに調べることができる。

□例えば、100億円の価値があると思われる企業があってトータルの株数は1億株だとする。このとき適正な株価は100円になる。このような企業の株が50円で売られているとしたら当然買うべきだ。そういう企業を探す必要がある。

□しかし、企業の価値をどうやって算出するのだろうか。そして、どうして自分が算出した企業の価値より安値で市場ではその株が流通しているのであろうか。ひょっとしたらそもそも自分の考える企業の価値が誤っているのではないか。ある株を安いと言うということは、自分が推定したその企業の価値は市場が決定している株価よりも適切だと言えなくてはならないということだ。そして、そのように言えるためにはなぜ不適切な値段がついているのかも同時に説明できなくてはならないことになる。安いと思って半額の刺身を買ったら思いの他生臭かったなんてことはよく経験される。安いのには理由があるのだ。ひょっとしたら10%の可能性で生臭いかもしれないが、もし買ってみてそうだったら明日火を通して食べるから自分にとってはこのマグロの刺身は安いのだ、と言える時に初めてその怪しい半額のマグロを購入することができるのである。

 

 

 

 

 

 

■おまけ:指標の話(読み飛ばし可)

□少し株式投資をかじると、いくつかの指標が出てくる。PERとかPBRとかROEといった値がそれだ。ざっくりと、PERやPERが低いと割安といわれる。(実際のところ必ずしもそうではない。)これらの指標についてもしかし解説しておく必要があるだろう。

□ここで、悪い男の話をしよう。多くのメンヘラ女子を依存させて、夜の仕事に落としてきた架空の男の話だ。さて、今その男には二人の選択肢がある。メンヘラAはかなり実際かわいい。セクキャバで働いている。大体彼女が稼ぐのは毎年500万円程度だ。メンヘラBはパパ活で稼いでくれて、彼女は大学生で忙しいので大体100万円程度しか稼いでくれないだろう。ところで男はメンヘラと出会うために精神の不安定な若年女性が集まる怪しい新興宗教団体に加入していた。しかしメンヘラを闇の世界に落としすぎていたことが教祖にばれて、その右腕であるシラットの達人に1000万円を用意しないと頭皮を剥いでから斬首すると脅されてしまった。何とか1000万円をかき集めた男だが、どうにも元を取らないと損した気分である。ところが、AとBはお互いに面識があるようで、そうなるとここを二股することは現実的ではない。男はどちらの女性に貢がせるとより1000万円の損失を回復するためにコスパが良いだろうか?

□PERはそういう指標である。メンヘラAを選択は投資額(?)の1000万円にたいして、毎年500万円稼ぐ。この時メンヘラAが企業であったなら、PERは2倍になる。これはつまり、2年で元が取れるということである。メンヘラBはPER 10倍になる。たしかにメンヘラAの方が投資額(?)に対して割安である。また、メンヘラAは本当に精神が限界のようで、あと何年働けるか分からない。メンヘラBはそんなに実際つらそうにしていないし、何だか賢く生きている印象だ。パパ活をしているといっても一線は超えないらしい。PERで見て割安であっても本当に割安かどうかはわからない。今後も同じだけ稼げるとは限らないからだ。また、メンヘラAは美容整形のローンの返済があり年に500万円稼いでいるといっても男に貢いでくれる額はせいぜい100万円程度だ。いくら稼ぐかよりも、いくら自分の手元に結局入るのかを重視するという考えもありだろう。そういう考えの人は配当割引モデルなどでググると幸せになれるだろう。

□ちなみに、メンヘラBには2000万円の貯金がある。そして借金はない。この時メンヘラBのPBRは0.5である。2000万円の資産に対して、1000万円の投資は半分だからだ。メンヘラAは手元に現金がほとんどなく借金はあるので資産価値でみたら断然Bである。

□脱線しすぎた。つまり、株価に対して稼ぐ額を見ているのがPERで、資産の価値を見ているのがPBRだ。確かにそれらが低い方が割安のようだけれども、メンヘラAのように同じ額をずっと稼げないなら投資先として本当に割安なのか? と一歩踏みとどまって考えるべきなのだ。つまり、これらの指標を知っておくことは大切だけれども、これらの指標だけで売買することは適切ではないということになる。

□では、企業の価値はどのように算出するべきだろうか。これにはいくつか方法がある。有名なものはdiscount cash flow法である。または、先程ちらっと書いた配当割引モデルでも良いかもしれない。簡単に似た企業同士を比較することも良いかもしれない。あるいはこれらを併用した方法でも良いかもしれない。いずれにせよ、何らかの方法で企業の価値を算出することが求められる。