ぶたびより

酒を飲み、飯を食べ、文を書き、正解を生きたい

自動車サスペンション テイン とKYB

自動車関連

〇はじめに

 自動車部品関連銘柄を覗いていた。もとより不人気業種であり、指標的に極めて割安な銘柄がゴロゴロと市場のすみっこに打ち棄てられている様を見て興奮しないバリュー投資家は少ないのではないか。一般に景気敏感性の高い自動車業界で指標的に安いのもやむなし、しかもその下請けで、堀が浅く、価格交渉力に乏しく、何ならEVの普及とともに不要になってしまうかもしれない事業もあるだろう。誰もが投資を躊躇する銘柄が好きだ、人と同じことをして勝てるのは安定した入金力と無限の忍耐力・寿命のあるインデックス投資家だけだと思っている。Twitterで見かけて気になっていた銘柄をざっと調べていく。

 個人的な意見だが、①割安なものをみつけて②割安な理由を想定して(これは市場の空気感で、例えば円安が逆風な銘柄なら今ならバチクソ売られるし、原油高が逆風になる企業も売られるし、直近の決算が悪いものも売られるし、など。割安なものには割安なりの理由がある)⓷解除可能性を考える(解除されないとしても我慢できるスパンを考える、解除可能されるシナリオを考える、シナリオが想定から外れたら売る。また、なぜ自分だけが解除可能性に気が付いているのか? を説明できるか)だけである。割安な企業は実際多いし、そんなことはみんな気が付いている。問題はなぜ安いまま放置されているのか、 なぜあなただけが安いことに気が付いて、そしていつか上がる銘柄を購入できると思うのか? である。僕は割高な銘柄を自分よりバカに買ってもらうことを期待する空中戦のようなトレードはしたくない。リターンも大きいけれどリスクも大きいからね。

 

〇KYB

自動車・バイクのショックアブソーバーや油圧機器の企業。2019年に免震耐震ダンパーの不正問題で大赤字を出した。ただでさえ株式市場で不人気そうな業種なのに不人気さに拍車がかかった銘柄。指標的には激安そのもので、MIX係数が2を切っている。

営業CF 200億円程度、投資CF150億円程度でここ5-6年程度均すとFCFは50億円/年程度。投資はそれなりの額が必要のようだが、かといって成長しているわけではない。景気敏感性が高いのか(ま、車関係だもんね)年度によってばらつきが大きい。)

自己資本のつみあがり不正があった2018年までは順調だったが、そこをピークに一旦急激に減少→回復途上。換金容易な資産は1600億円(現金・売上債権・その他金融資産)程度で、負債すべてで2700億円。有利子負債多め(その他金融負債が何を指しているのか不明だが、それと借入金を合わせて1200億円程度)で財務はあまり良くない印象だが、2021/3と比較すると固定負債のうち社債・借入金が200億円程度減っていて改善傾向。不正問題後に業績や財務が改善途上という状況に見える。

無成長のフェアバリューは、50億円に割引率7%として、事業価値714億円、資産価値を調整してマイナスなので個人的にはあまり投資対象にならない。PLでみるともう少し事業価値評価してもよさそうだけど(営業利益300億円程度なので)、FCF 50億円/年程度と考えると厳しい。

 

〇テイン

 サスペンション関連と言えば次はここ。自動車部品というよりここは改造車の車高調整用。指標的には割安水準でPER 6 PBR 0.86程度。業績は安定成長で株価も↑だったが、直近の決算で「あれ、ここ無成長企業なんか?」懸念で売られているという解釈。2019年から営業利益(百万)363→566→951→920)で、成長期待していた人々はヤレヤレ売りをするだろう。ROA 15 ROE 17程度で指標的に割安な企業にしては利益率も高い。割安なのに事業価値が高そうで、割安な理由が分かっていて(成長企業ではないのだろうという狼狽・落胆)、イヤイヤここ成長企業なんでという確信が持てるならばまたとないエントリーポイントになりそう。

 割安に見えるが、一応CFを確認する。

 最近の営業CF(単位億円) 7(2019)→ 8(2020)→ 10(2021)→ 3.6(2022)と減っているのが気になるところ。投資CF(単位億円)2.8→2.6→ 5程度だが、設備投資の内容は決算書を読んでも不明。投資したのはわかるがどのくらいのFCFが創出できるのかも同様に不明。2022の営業CF↓は法人税支払いが大幅増加(4.8億)していたり為替差益(1.6億)を引いたりなどの要因もあるので、EBITDAで見ればほぼ13億円で横ばい。投資2-3億円/年に落ち着いたとして営業CF去年と同じくらいの 10億円程度稼いで、FCF 7億円出せるなら、無成長で事業価値100億円程度だし、資産価値-8億円調整しても時価総額50億円程度なのはこの想定であればかなり割安。問題はこの想定があっているかどうかで、ここが一番難しい。気になる点としては、最近投資かさんでいる割に営業CFやEBITDAの増加につながっていない点なので、この理由が一時的で解除可能なのかどうかだと思っている。