ぶたびより

酒を飲み、飯を食べ、文を書き、正解を生きたい

ローストビーフを作り損ねた話

仕事が最近は早く終わるので何か手の込んだものでも作ってみようかなと大きめのお肉の塊を買ってローストビーフの作り方をネットで調べていた。フライパンで作れるという。スーパーでアメリカ産牛肉のパックをかって熱したフライパンにオラァと乗せたら思いの外薄かった。これなら普通にステーキだなと思って300gモリモリ食べていたのが3時間前だったのだがどうにもお腹の調子が悪い。家に炊飯器がないので糖質をビールで摂取していた時期があったのだが痛風になってからやめた。ところが肉も痛風に良くないという。救いはない。

ゲームオブスローンズを見始めた。以前、大学の頃の部活の同級生が飲み会の時にたしか勧めていて見よう見ようと思っていたのだが、どうにもドラマというのはまとまった時間が取れないからなと手を出していなかったのだ。先日別の方からも勧められてとうとう観ることとなった。

フワフワのファンタジーなのかなあと思って観ていると開始5分で予想を裏切られて笑ってしまった。そうだ、R15って書いてあったことを思い出す。中世ヨーロッパ(?)みたいな世界で王国内のゴタゴタと海を挟んだ隣の国の屈強なモンゴル人みたいなのが出てきて、よく首が飛ぶ。バーフバリもビックリ。主人公と思しき人はマトモで大変そう。軟骨無形成症らしき脇役が好き。小馬鹿にされながらもテキトーに生きててそこそこ楽しそうでちょっと辛そう。

軟骨無形成症で思い出したのだが以前は小人プロレスという文化があったらしい。たまにコンビニに置いてあるテストステロンどばどば出てそうなオスが表紙の雑誌などを見て強くなりたいぞの思いを強くすることはあっても、そもそもプロレスをあまり見ないので知らなかった。

以前これに関して人権団体が彼らの仕事を奪ったという説が流れたことがあった。つまり先天性疾患がある人を見世物にするのは良くないという意識の高い現代的な意見が彼らを表舞台から消したのだと。そして彼らは仕事を奪われてしまった。裏を取ろうと思って偶然今調べていたらこんな記事を見つけた。

「誰が小人を殺したか?」小人プロレスから見るこの国のかたち(前編)https://www.cyzo.com/2009/04/post_1896_entry.html

結局人権団体の圧力があったとかではないようで、出しにくい雰囲気に少しずつなっていったという話のようだ。

これもそうだけど本や記事に引用文献があまりないことが気になってしまう。どれが堅固なエビデンスがあり、どれがエキスパートコンセンサスでどこからが著書の意見なのか分からない文章が多い。そういえば義務教育の教科書にもあまり引用文献が載ってなかった。コロナでも血液クレンジングでも怪しい癌やアトピーの治療でもワクチンでも何でもそうなんだけど騙されないための科学的態度の基本を義務教育で身につけられたら良いのにね、と思う。そういえば植物系の論文で古事記が引用されていて面白いなと思ったことがあった。ところでハリソン内科に引用文献がないことにもやつくのはわたしだけでしょうか。5ページくらいしか読んだことないけど……。これ値段の割に知りたいことが書いてないなと思うのはわたしの臨床能力が低いからなのかな。普通に診療してて出会う疾患の病態生理は学生の頃に習ってるし個別の疾患のことはdynamed plusとかで検索してそれの孫引きでレビュー論文にあたった方が詳しいし、具体的な診療はガイドラインを参考にしながら70点くらいを目指すので良いのではないか。僕が総合診療医で特段詳しい領域がないからなのかな。

話が逸れた。とにかく引用文献のない記事で何となく自分の好みの情報に当たりながら、好きな世界観を作りやすい社会になったなと思う。Twitterの居心地が良いのは見たいものだけが見えるからだ。もし腹立たしいものばかりが見えるとしても、それは腹立たしさを感じることが快楽になっていることを意味するだけだ。一部のアンチアンチワクチンがそう。科学的な正しさがほとんど確実に証明されていることについて、誤ったことを話す人々を殴ることに後ろめたさを感じにくいから娯楽として成立しやすい。

後ろめたさを感じにくい構造を感じとった時に嫌な人間にならないようにしたいなと思う。タバコをやめられないダメな子供が喘息の人とか自分がCOPD患者とか、好き放題して2型DMで透析になる人とか、アンチワクチンとか、夫婦選択別姓の反対とか。僕は他人の人生を救おうみたいな御大層な尊い感情を持っていないので、あなたの幸せ度が最大まであがるように他人の幸せを損なわない範囲で生きてねと祈りながらほんわか診療している。寿命短くなるし多分孫の顔見れないけど君の幸せは君が規定するものだからね、という感じ。医療者だけどJTの株買ってるしね。あそこ配当がいいからな!

『スリービルボード』という映画があって、これは娘がレイプされて焼き殺された田舎の母親が主人公の映画。僕がネタバレのないと思う解説はこち。

https://miyearnzzlabo.com/archives/45952

で、この映画にも小人の男が出てきて、「あんたはいつも俺を下にみている」って言ってデートから立ち去るシーンがあった。ちなみに舞台はアメリカの古き良き差別的田舎でゲイと黒人に人権がないタイプの街だった。差別的田舎を描くのも小馬鹿にしていて差別的なんじゃないかとかあるけど。ちなみにこれ結構いい映画です。

3月頃に飯を食べに行っていた人に『鬼滅の刃』を勧められてAmazonのプライムビデオで見た。「俺は長男だから〜(頑張る)」って主人公が言うシーンで違和感があった人が僕の周りに複数いた。別に長男だから頑張らなくてはいけないとか、長男でないと頑張らなくて良いとか一言も言ってないのに。『鬼滅』自体は熱くて良い。

コロナにより方々で近所の店に営業をやめろとか苦情を言う良き市民たるところの自粛自警団みたいなものが誕生しているようだ。

家から出られずストレスの溜まる時だからこそ誰もたたかずにいられたい。批判する時に後ろめたさを感じない時こそ自制したい。つまり、生っぽい肉食べて嘔吐している私のこともいじめないで……。自己責任論は誰も幸せにならない。でも今度はもう少し肉をしっかり焼きます、これこそ科学的態度です。ほめて〜〜