ぶたびより

酒を飲み、飯を食べ、文を書き、正解を生きたい

スギ花粉、受容と共感

こんなにも快晴だというのに露天風呂から見える近くの山が霞んでいる。花粉症の季節が来た。 学会のため金曜日からお休みをいただいていた。このタイミングで丁度電子カルテの更新作業が入るのために救急外来は全てストップしている。更新してくれと頼んだ覚…

学会の話

金曜日の朝5時、まだ空けやらぬ空をすし詰めの羽田行きのマイクロバスから眺めながら出す吐息は酒とゲロの臭いがする。学会で福岡に行くのだ。 前日は当直明け、3時と4時に軽症患者が来院してほとんど寝られず研修医がイラついていた。ウトウトしながらカフ…

病院の話

おはようございますと言うと返事が返ってくる人ばかりだ。消化器内科を回るようになってから限界高齢者から解放された。限界高齢者というのは私が勝手に作った名詞で、要介護5くらい寝たきりで常に自分の唾液を誤嚥していて意志の疎通が全くとれない本来なら…

ペニシリンアレルギーの話

勉強したら追記していきます 結構ペニシリンアレルギーで困ることが多くて、ふわっとした病歴で、絶対にTENやSteven Johnson、DIHSのような重症なものでなく、「あたまがふわふわした」とか「嘔吐した」とかそういうアレルギーとしてはぱっとしない病歴で皮…

やさしさの理由

天気予報は雨。午後になってから窓のない部屋にこもっているから外の天気を感じられない。エアコンの音とたまに廊下を行き来する人の足音が届くだけの狭い当直室でずっと突然指導医から頼まれたケースレポートを休みの日に書いている。適度な時間になったら…

限界高齢者の話

もう死ぬんでいいよ と話す超高齢者に何度僕はCVC(クソ太い点滴)を挿入してきたのだろうとふと考えると暗い気持ちになってくる。話せないレベルの人でも暴れて抗おうとするが、必要な処置ですからねと押さえつけてしばりつけながらいれたりする。別に必要…

おねしょの神様

夜も更けた田舎の飲屋街、小汚いスナックの店々からくぐもって響く泥酔したおっさんの調子っぱずれの懐メロにどことなく寂しい気持ちにさせられる。月明かりに照らされた鄙びた街路をテクテクと歩くのは私、と、その遥か先に人語を解さぬビーストが奇声をあ…

ビアガーデン

いつものように飲み会の予定を忘れていた。当直明けの倦怠感が背中にのしかかってきて、殺風景な家の布団に寝転がってみたはいいけれど、なんだか心がザラついたような感じで、目を閉じても焦燥感があって寝付くことができない。ゴロゴロしながらツイッター…

りっぱにりっぱに

エアコンの配管からの音の波長が絶妙なので、夜当直室で寝ていると遠くで鳴っている救急車のサイレンの音のように感じられることが多々ある。救急車をタクシーがわりに使う人が問題って話は度々耳にするけれど、地域柄もあるのだろうが救急車に乗ってくる人…

しらないまちへ

ワンマン電車の信越線が長岡をすぎると少しずつ家より田圃が多くなり、さらに行くと山がちになってそのうち田圃すら少なくなっていく。6月初めの透き通った風を受けてひらひら揺れる小さな稲たちが涼しげで、うとうとしながら初めて乗る路線の車窓を流れる景…

そうだ京都に行ったんだった

当直が一段落ついた。早く寝たほうが良い。はてなブログをiPhoneから更新できることを知ってしまったので、短文を頻繁に更新していきたい。ツイッターとの境界が不明瞭になってしまう。 京都には何となく憧れがある。道にははんなりした黒髪清楚なおねえさん…

ポリクリと限界料理の話

どちらかというと料理をする方だと思う。凝ったものは作らないけれど、ニンニク、脂、肉、トマトかクリームまたは豆乳にコンソメ、あるいは野菜とウェイパーなどを火にかけたりして雑な料理をつくってビールをすすりながら食べながら映画みるのが好きだ。一…

Tinderの話

店の中に入ると建物自体は一般的な定食屋なのに、異国の耳慣れない音楽と昼からビールをのみつつポルトガル語と思われる言語を話すおじさんとおばさんと若者のグループが大皿にもられた食事をつついていた。 「せんせ、私のことブログのネタにするんすか、う…

レジナビの話

一週間ぶりに東京駅の新幹線のプラットフォームに降り立った。奥に見える丸の内のオフィスビルは高く澄んだ関東の暮れゆく冬空を背景に異様に清潔そうで、あこがれつつも田舎育ちの僕にはどこかよそよそしく何となくなじめない。一方、新幹線乗り場というの…

ゲロの中身と私がここにいる理由

自分の文章というのはあまり読み返したくなるものではなくて、むしろ書いた瞬間に破いて捨ててしまいたくなる。多くの場合において、書かれた文章や話された言葉たちは、メンタルのゲロみたいな存在であるから、犬のウンコを木でつつく小学生みたいな気分で…

セワシ君、イマ・ココ、ツララとインフルエンザなどに関して

診療所は峡谷に面しており、窓の外ごついツララの向こうに見える寒々しい対岸の岸壁はモノクロで水墨画みたいだ。鳥は一羽として鳴かず、ボボボとうなる古いガスストーブは信じがたい短時間で部屋を暖める。部屋の熱にツララが解けて、時折階下のやねにガラ…

娘を助けてママみを求むるノワール

「私が欲しいのは愛か死よ!」 ショートボブの小枝みたいな体をした大人びた容姿の破滅的な少女(マチルダ:ナタリー・ポートマン)が武者小路実篤の小説でも読んだのかそんなことを叫ぶシーンがある。映画『レオン』のワンシーンです。当時この映画の影響で…

111回医師国家試験の話

受験した直後に書いた文章です。国家試験が近く懐かしいので貼ってみます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 3日間行われる最後の医師国家試験である111回医師国家試験が2/11から2/13まで行われた。次回以降の国試を受ける人の…

冬の小さな雪深い村へ

都会からの潤沢なスキーマネーによりきれいに除雪された国道沿いを北東に走っていくと家が少しずつ疎らになっていく。途中で峠にぶつかり、そこで完全に関東平野から続いてきた町は途絶える。トンネルを二つくぐり、温泉街を抜けてさらにしばらく車を道なり…

それでも年は明ける

「36歳女性とカップル成立したのはいいけれど、そのあと2回デートして、結局一回りも違う女性を連れて歩いていると衆目を気にしてしまうし、趣味や職業など文字に起こせばいい女性なんだけれど、少しずつ距離を置いていこうと思うんだ」 5日連続飲み会の3/5…

なってしまう話

「先生は外科になるんですか?」飲み会の翌朝、無心で処置のための回診車をきいこきいこ引っ張りながら病棟を歩いているとそう訊かれた。「いや、何だか総合診療医になるみたいですよ、わたし」「へえ」 最近受ける質問のほとんどは、「街コンってどうなんで…

街コン:地獄篇

introduction 街コンについては先日記事に書いた通りである。私は絶えず尿意の話をして、五苓散をビールとともに飲んで女性陣をドン引きさせた。帰り道、落ち葉の舞う駅から家までの7kmを歩きながらなぜ自分はこんなことをしているんだろうとひどく悲しい気…

君がウキウキしてるのは

どうしてもテンションの上がらない時がある。さすがに人前に出てずっと苦虫を噛み潰したような顔しているほど不躾ではないので、誰かと話していればなんとなく型通りにニコニコして、そのうち自分の表情に引きずられて気分が回復してくるのだが、誰にも会わ…

生活について

「20代半ばにしてすでに痛風とは、いったいどんな生活をしているんだい、君は」 忘年会シーズンが来た。一杯目を生ビールではなく、ハイボールを注文すると大抵「あれ生じゃないのかい」と訊かれる。「ええ、自分痛風もちなんですよ」と答えると冒頭の疑問文…

おむつの私と雲のむこうの神様

だんだんと日が短くなったことが、朝の寒さで6時ころに起きた時の窓の外の薄暗さでわかる。通勤時、利根川を越える国道の橋から遠くに見える山にへばりついたスキー場からの呼び声が聞こえる。そうだ、もう年末だ。日々やるべきことや考えることたちの重みが…

病気の話の続き

昨晩、夜中に一人エアコンの音だけがさみしく響く医局のデスクで当直の外来が途切れた時間に最近病気について思うことなど書いておりました。医学部に来たくなかったというのは、醜く薄暗く恥ずかしい優越感によるものの可能性があるという話、人を助けたい…

病気の話

こんばんは当直です。外来が途切れた隙間に書き進めていきます。 突然ですが、働く前、僕の周りには「人を助けるためにお医者さんを目指しました」なんてことを表だって話す人はあまりいなかった。もちろん、何かを表明することは、何かを思っていることとは…

街コン戦記

【症例:26歳 男性】 【主訴】秋風が寒い 【現病歴】朝、iPhoneのストラムの音で6:45に目が覚めた。調子のよい時はこうなのだが、調子が悪い時は悪夢で、あるいは飲みすぎた日などは嘔気で、朝5時に目が覚める。死にそうに眠いのに、妙に動悸がしたり、得体…

立ち去ることが難しい話

学生の頃に研修医じゃまだくん(https://www.amazon.co.jp/研修医山田-じゃまだ-君・トリロジー-茨木-保/dp/4895904024)を読んで絶対に働きたくないと思った。そこでは夢を持って医学部に来て卒業したのにも関わらず、働き始めてからまともに指導もされずあ…

佐渡島旅行記

「進行方向右手に見えますのは、両津港北防波堤灯台でございます。灯台マニアの中ではおけさ灯台の名前で有名です」 その日の佐渡汽船おけさ丸は前日の台風の影響かひどく揺れており、僕はもともと二日酔いだったうえ、トラベルミンを持ってくるのも忘れてい…